第64回リベラルアーツ・カフェを開催しました(報告)

第64回リベラルアーツ・カフェを8月27日、金沢未来のまち創造館で開催しました。
  テーマ:「石川の瓦、その価値と文化。~瓦バンクの活動から見える課題~」
  ゲスト:WHOLEの吉澤潤さんと鬼師の森山茂笑さん

「金沢未来のまち創造館」の会場の様子

 吉澤さんと森山さんは震災前から小松市で瓦の啓蒙活動をしていましたが、能登半島地震の発災後に訪れた珠洲市で貴重な能登の黒瓦が廃棄されていく様子と、地域住人の黒瓦に対する強い思い入れを目の当たりにして、瓦をレスキューして再利用する方法を探る「瓦バンク」というプロジェクトを始められました。

 「震災直後は瓦屋根のせいで家が倒壊したなどの風説も流れ、瓦が悪者扱いされてしまうことに我慢できなかった」と吉澤さん。能登の風景や文化の重要な要素であるはずの黒瓦が無くなっていくことに何とか手を打とうと活動を始めたそうです。

(左から)WHOLEの吉澤潤さんと鬼師の森山茂笑さん
会場の様子
会場の様子
会場に持ち込んで頂いた能登の黒瓦(右)と小松瓦(左)

 森山さんによると、能登の黒瓦は地元の土を高温で焼いていて、ずっしりと重く、頑丈だそうです。潮風や風雪に耐えられる艶のある黒い釉薬も地元の材料で、瓦の裏側にまで丁寧に釉薬が掛けられています。金沢の街並みの景観を特徴づけている黒瓦も、元々は能登から船で運んできたものだそうです。しかし能登の黒瓦の製造は1970年代をピークに減少し続け、石川県内に唯一残っていた小松市のメーカーが2022年に廃業。石川の瓦は完全に途絶えてしまいました。

 今後、急速に公費解体が進むと瓦は投げ落として粉砕し廃棄されてしまうので、解体が始まる前のタイミングでレスキューする必要があります。最近になって坂茂事務所、NPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク、越前セラミカの各法人の協力を得ることによって瓦バンクの活動は組織的に動き始めたそうです。吉澤さんは、回収後の再利用については瓦の中古市場が無いことや、建材として再利用するには品質保証が必要などの課題も山積していて、関係者のネットワークや専門的知見が必要と話されました。

 イベント参加者との意見交換の場では、屋根瓦としてだけではなく、さまざまなアート作品に素材として活用できるはずだというアイディアや、粉々になってしまった瓦でも廃棄物で終わらせないで活用する方法があるのでは、などの意見が出ました。